委託証拠金は最低でも100万から200万程度を用意しなければならない。金額は証券会社によって異なる。昔は2000万円ほど必要だったりしたようだ。
ポジションをとるとき、建玉の総額に対する証拠金の比率が委託証拠金率となる。たとえば、100万円の証拠金に対し、200万円信用買い(つまり、200万円分の株を買う)か200万円空売り(つまり、200万円分の株を借りてきて売る)すると、100 万/200万 = 0.5 = 50% となり、証拠金率は 50% ということになる。逆に見れば100万円しか用意していないのに200万円の取引をしていることになり、2倍のレバレッジを効かせていることになる。すなわち、委託証拠金率の逆数がレバレッジ率ということになる。
委託証拠金は現金で用意してもいいが、利息はつかないので、不利である。そこで現金の代わりに債券や株式で用意してもいい。これらを代用有価証券という。ただし、値下がりのリスクがあるので有価証券の時価そのままで評価することはせず、いくらか割り引いた価格で評価される。何割で評価されるかということを掛目とよぶ。国債などは90から95%、東証上場株式などは80%程度で評価される。
委託証拠金率 = 委託証拠金の評価額 / 建玉総額
であった。いったん信用取引をしたらポジションを変更しない限り、建玉総額は変わらない。ただし、委託証拠金の評価額は変わりうる。
まず、委託証拠金を有価証券で差し入れている場合は、価格の変動によって評価額が変わってくる。
また、建玉の損益によっても評価額が変わる。たとえば、ロング・ポジションとして200万円もっていて、それが10%値下がりしたとすると、20万円の損失である。同様にショート・ポジションとして200万円もっていたとして、その銘柄が10%値上がりしたとすると 20万円の損失である。委託証拠金からこの損失分を引いたものが評価額となる。
ということは、建玉で利益が出たなら委託証拠金の評価額が上がるはずだが、オンライン証券会社ではそうはしないことが多いようだ。まとめると、
委託証拠金の評価額 = 委託証拠金の時価 + 建玉の損益 - 取引手数料
となる。
さて、前述したように委託証拠金率の逆数がレバレッジ率であった。そこで、証券会社では委託証拠金率の最低ラインを決めることによって顧客のレバレッジ率の上限を定めている。証拠金率を50%にするということは、顧客が2倍までレバレッジを効かせることを認めるということだ。40%にしたなら、2.5倍までのレバレッジを認めることになる。顧客の委託証拠金率がこのラインを下回ると証券会社は新たな建玉を認めなくなる。
証拠金率があまりに下がり過ぎると、証券会社はリスク回避のために顧客に委託証拠金の増額を求めてくる。これが追証(Margin call)である。この証拠金率を最低証拠金維持率と呼ぶ。制度信用取引では 30% に定められている。
さらに、顧客が追証にも応じず、証拠金率が下がり続け、20% を下回ったとき、証券会社は顧客のポジションを強制的に解消することができる。買い玉だったら、そのときの株価で売ってしまい、金を返してもらうことができる。売り玉なら、そのときの株価で株を買ってきて、レンタルしていた株を返してもらうことができる。
たとえば、委託証拠金として 125万円の株を差し入れれば掛目 80% として 100万円相当になる。そして、200万円の株を信用買いしたとする。このとき委託証拠金率は 50% である。その後、証拠金として差し入れていた株が20%下落し、信用買いした株も 20% 下落したとする。
このとき、委託証拠金の評価額は (125万 * 0.8 * 0.8) - (200万 * 0.2) = 40万 となり、委託証拠金率は、 40万 / 200 万 = 0.2 = 20% になってしまう。すなわち、証券会社に強制的に建玉を決済されてしまう。
この例だと、買玉をすべて売り払って 160万 を確保する。40万足りないから(証券会社は最初に 200万貸している)、代用有価証券も売り払って 100万を新たにつくり、そこから 40万円回収する。
したがって、証拠金率を一定以上に維持しなければならないのだが、そのためには、
- 建玉総額とその損益の管理 = 建玉管理(ポジション・コントロール)
- 委託証拠金の時価の管理 = 資産管理(アセット・マネジメント)
の2点が絶対に必要になる。
ここで少し考えてみたのだが、委託証拠金率が 0 にならない限り、証券会社が貸した金やレンタルした株を回収できなくなることはないはずである。
なぜなら、証拠金率 > 0 ということは、
委託証拠金の評価額 = 委託証拠金の時価 - 建玉の損失 > 0
ということである(取引手数料は捨象)。回収しなければならないのは、建玉総額であり、建玉を処分しても足りない部分、すなわち、建玉の損失分は、委託証拠金の評価額でまかなえることが分かる。
つまり、委託証拠金率というのは、建玉をすべて決済し、貸した金やレンタルした株を回収した後に残る金額が建玉総額に占める割合だということもできる(証拠金が有価証券なら掛目だけ割り引いているので、決済後に残る金額が建玉総額に占める割合は委託証拠金率よりも高くなる)。
今までは金利のことは考えなかったが、当然、信用取引には金利がかかる。
一般信用取引では、証券会社が顧客と相対取引する。制度信用では、証券会社は顧客と証券金融会社との間を仲介するだけである。したがって、制度信用では、金利の他、返済期限や信用取引可能な銘柄(貸借銘柄)は証券金融会社や取引所が一律に決めている。一般信用の場合は、証券会社ごとに決めることができる。
1 comment:
hm... love this post )
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