Thursday, September 21, 2006

暗号技術のはなし(3)

平文の言語学的なパターンが暗号文にそのまま残ってしまうというモノアルファベティック暗号の欠点をなくすには、平文を暗号化するとき、1種類の文字が複数の種類の別の文字に換字されるようにすればいい。たとえば、a という文字がある場所では e に、別の場所では t に変換されるというようにすればいい。

このような換字暗号を「ポリアルファベティック暗号」という。その1つが「ヴィゲネーレ暗号」だ。

シーザー暗号では使用できる暗号化キーのうち1つだけを使って平文を暗号化していく。1つのキーで平文のすべての文字を変換するのでモノアルファベティックになってしまうのだ。ヴィゲネーレ暗号では、複数のキーを使って暗号化をおこなう。たとえば、キー番号 3, 25, 14 を使って暗号化するのであれば、平文の1番目の文字はキー番号 3 で、2番目の文字はキー番号 25 で、3番目の文字はキー番号 14 で変換する。以降、これを繰り返していく。こうすると、平文中で同じ文字でも、出現する場所によって異なる3つの文字のいずれかに変換されることになる。使用するキーの数を増やせばヴィゲネーレ暗号の強度は増す。複数のキーを1まとめにしたものを1つのキーにしているので、これはキーの長さということができる。

ヴィゲネーレ暗号のようなポリアルファベティック暗号では、平文の言語学的なパターンはモノアルファベティック暗号よりは隠蔽されている。したがって、「単純な」統計分析では破ることはできない。

No comments: